kon.2  ヨハネス・ブラームス「ハンガリー舞曲集」
                           Johannes Brahms「UNGARISCHE TANZE」 



ピアノの名手であったブラームスが、ピアノ4手(連弾)用に作った曲集。


1853年、エドゥアルト・レメーニィ(ハンガリー生まれでジプシーの血を引くヴァイオリニスト)の演奏旅行に、ブラームスは伴奏者(ピアノ)としてついて行った。

ジプシースタイルを取り入れた独特の演奏で知られていたレメーニィは、この時ブラームスにハンガリーの民謡の旋律などを教えた。

それをきっかけにブラームスは独自にハンガリーの旋律の採集を始め、その中からまず1869年にピアノ連弾用ハンガリー舞曲集として、10曲を2集に分け

出版。それが大人気だったので、1880年には更に11曲が2集に分けて出版された。

しかしこの曲集が大人気となってしまった為、レメーニィが気を悪くしブラームスに文句を言って訴訟を起こしたが、ブラームスは出版の際に「作曲・ブラームス」

ではなく、「編曲・ブラームス」としていたので、ブラームスが勝った。


後の1872年には、ブラームス自ら最初の10曲をピアノ独奏用に編曲して出版した。今では、オーケストラ版もよく演奏されるが、ブラームス自身がオケ用に

編曲したのは、1番・3番・10番のみ。


21曲中、5番が最も有名である(と書かれている)。そのためか「5番が一番人気がある」ともよく書かれているのを見るが、わたしは「5番以外を普通の(特別

クラシック音楽に興味がある訳ではない)人は聞く機会が無いからではないか」と思うのだ。まあ、人気が無いから聞く機会がないと言われればそれまでだけ

れど。みんなに全部聞かせたら、何番が一番好かれるのだろうか。わたしは3番と6番と19番が好きだ!ひとつに絞れてないけど。


ツィゴイネルワイゼンもジプシー風音楽だが、ハンガリーの音楽=ジプシー的な雰囲気→激しいリズムや華やかな音色や哀愁も併せ持った感じに、西欧の

音楽とは違う魅力を感じ、惹かれた作曲家は多い。ハンガリーだって西欧ではあるのだけど、正統派クラシック音楽と言えば、ドイツ・オーストリア・ロシア・

フランス・イタリア辺りの音楽ということなのだろうね。人種で見たら似たような感じだけれど、音楽的にはハンガリーやスペインは、正統派地域の作曲家に

とっては異国情緒のようなものを感じる国なのだろう。その後、もっと世界が広がって、タイや中国や日本等のアジアをモチーフにした曲を作る作曲家も出て

くる訳だが、その前段階といったところでしょう、きっと。全世界共通で「異国情緒」というものは、人間の感性に強く訴えるものがあるらしい。




全21曲紹介  指揮者と演奏団体の名前は、わたしが好きな演奏(CDですが)をしている人たちの名前です。


1番 ト短調 G minor アレグロモルト Allegro molto 5番の次に有名(らしい)。
ドミトリー・キタエンコ指揮 モスクワフィル
2番 ニ短調 D minor アレグロ・ノン・アッサイ Allegro non assai テンポが急激に変わる曲。オケ用の編曲はハレン
3番 ヘ長調 F major アレグレット Allegretto のどかな感じ。オーボエが旋律を吹く。
カラヤンが指揮した時の演奏。何か爽やか。
4番 嬰へ短調  F sharp minor ポコ・ソステヌート Poco sostenuto オケ版の編曲はユオン
5番 ト短調  G minor アレグロ Allegro オケ版の編曲はシュメリング。
「情熱的に」と指示される、超有名曲。
カラヤン指揮、ベルリンフィルの演奏が、エキサイティングで好き!
早い!
NHK教育で夕方にやってる「夕方クインテット」で演奏された
5番も良かった。
6番 ニ長調 D major ヴィヴァーチェ Vivsce 編曲はシュメリング。
コロコロ変化するテンポが、奔放で移り易いジプシー気質
を表してるそうだ。確かに。
キタエンコ指揮・モスクワフィルのテンポの変え方が好き。
ベルナルト・ハインティンク指揮、ロイヤルコンセルトへボウのも
良い。
7番 ヘ長調 F major アレグレット Allegretto 編曲はシュメリング。 
アバド指揮、ウィーンフィル。踊るには速いけど。
8番 イ短調 A minor プレスト Presto 編曲はガル
9番 ホ短調  E minor アレグロ・ノン・トロッポ
Allegro ma non troppo
編曲はガル
10番 ヘ長調 F major プレスト Presto アバド指揮、ウィーンフィル。こっちは踊りやすそう。
11番 ニ短調 D minor ポコ・アンダンテ Poco andante オケ版の編曲はパーロウ。
これは、ハンガリーの旋律の編曲ではなく、ブラームスの
オリジナルと言われている曲。
12番 ニ短調 D minor プレスト Presoto 編曲はパーロウ
13番 ニ長調 D major アンダンティーノ・グラチオーソ
Andantino granzioso
特に無し!
14番 ニ短調 D minor ウン・ポコ・アンダンテ Un poco andante これもブラームスオリジナルと言われる。編曲はパーロウ。
15番 変ロ長調 B flat major アレグレット・グラチオーソ
Allegretto grazioso
編曲はパーロウ。
アバド指揮、ウィーンフィル版が変な盛り上がり方をしてて良い。
16番 ヘ長調 F major これもオリジナル?編曲はパーロウ。
17番 嬰へ短調 F sharp minor アンダンティーノ Andantino 編曲はドヴォルザーク。
18番 ニ長調 D major モルト・ヴィヴァーチェ Molto vivace 編曲はドヴォルザーク。
19番 ロ短調 B minor アレグレット Allegretto 編曲はドヴォルザーク。
キタエンコ指揮、モスクワフィル&
   アバド指揮、ウィーンフィルのが良い。
20番 ホ短調 E minor ポコ・アレグレット Poco allegretto 編曲はドヴォルザーク
21番 ホ短調 E minor ヴィヴァーチェ Vivace 編曲はドヴォルザーク。もっとも華やかな曲。


舞曲とは → 踊りの伴奏用に書かれた器楽曲、又はそのリズムの様式などによって書かれた器楽曲。多くの音楽形式が舞曲に由来する。
          実際の舞踏のために書かれ、実際に踊る曲(ワルツなど)もあるが、大抵のクラシック音楽での舞曲は、踊ることを目的とせず
          そのリズムや形式をかりて、聞くためや演奏用に作曲されたもののほうが多い。
          このハンガリー舞曲は大体が簡単な3部形式で書かれている。



 ブラームスについて

1833年5月7日 ハンブルク 〜 1897年4月3日 ヴィーン

ハンブルクの貧しい音楽家の家に生まれた。音楽家だった父から音楽を学んでいたブラームスは、ハンブルクでは音楽の才能を(ピアニストとして)

認められていたものの、まだまだ無名だった。

ブラームス19歳の時、ハンブルクにやってきたヴァイオリニスト・レメーニィ(レメニー)に出会う。レメーニィは、自分の演奏旅行に伴奏者として

ブラームスを連れて行った。ヨーロッパ各地を回る演奏旅行の中で、ブラームスは「ヨアヒム(ヴァイオリニスト)」や「ビューロー(指揮者)」

「リスト(ピアニスト・作曲家)」「シューマン(作曲家)」などと知り合う。後にこれらの人々に認められて作曲家として世界に名が知られるようになる

のだが、中でも特に、シューマン夫妻の支援が大きかった。


ドイツ・ロマン派に含まれるが、割と保守的な作風。作品の特徴として「渋い、枯れている」とよく書かれています。ハンガリー舞曲に関してはそんなでも

  ないと思いますが。

*ブラームスは、リストと同じくらいの
名ピアニストだったと言う話もある。確かめようが無い訳ですが。

*ブラームスは
3大Bの一人である。Brahms(ブラームス)、Beethoven(ベートーヴェン)、Bach(バッハ)のドイツの有名な作曲家3人の頭文字がBである

  ことから、3大Bと言われる。言いだしっぺはハンス・フォン・ビューロー(上にも出てくる指揮者)。

*ブラームスの肖像をみると、
男前だ。



ブラームスの家系図